1. トップ
  2. 判例航海日誌
  3. 平成24年(行ケ)第10195号 審決取消請求事件 | みなとみらい特許事務所
  • 平成24年(行ケ)第10195号 審決取消請求事件

    2013.6.21カテゴリー: 判例航海日誌

     

    平成24年(行ケ)第10195号 審決取消請求事件

     

    1.事件の概要

     

     本件は、原告が、被告の特許に対する原告の特許無効審判の請求について、特許庁が同請求は成り立たないとした審決には、取消事由があると主張して、その取消しを求める事案である。争点は先願性(特39条1項)と分割要件(44条)である。

     

     

     

    (1)特許庁での手続

     

    <被告の手続>

     

    平成11年11月8日  出願

     

    平成14年4月12日  分割出願

     

    平成19年4月23日  分割出願

     

    平成20年6月13日  3番目の出願について設定登録(本件発明)

     

    <原告の手続>

     

    平成11年6月24日  出願(第一出願)

     

    平成15年12月24日 分割出願(第二出願)

     

    平成19年4月23日  分割出願(第三出願)

     

    平成22年10月24日 被告の本件特許に対して無効審判請求

     

    平成23年2月4日   第三出願について設定登録(甲1発明)

     

    平成23年7月25日  棄却審決確定

     

     

     

    (2)審決の要旨

     

     第1出願の際の明細書及び図面(第1明細書)及び第2出願の際の明細書及び図面(第2明細書)には、いずれも甲1発明16及び17の一部が記載されておらず、これらの各明細書の全ての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、第3出願が、44条1項の規定に基づく適法な分割出願とは認められず、出願日が遡及せず実際の分割出願日(第3出願の日)である平成17年4月18日に出願されたものとなるから、甲1発明16及び17の出願が、本件出願との関係で先願にはならず、したがって、本件特許が特許法39条1項の規定に違反してされたものとはいえない。

     

     

     

    (3)取消事由

     

    甲1発明16及び17の先願性の認定の誤り(取消事由1)

     

    法44条の分割要件を判断した誤り(取消事由2)

     

     

     

    (4)本判決における結論

     

    原告主張の取消事由にはいずれも理由がないから、原告の請求は棄却されるべきものである。

     

     

     

    2.本訴訟の争点

     

     本件発明の請求項1ないし4の「アウタープライマー(OP)」に相当すると原告が主張する甲1発明16及び17の記載の一部は、第1明細書及び第2明細書に記載されているものなのか否か。

     

     

     

    3.裁判所の判断(一部を抜粋)

     

    (1)原告は,第1明細書が援用する甲12の1にはOPを用いた増幅反応が記載されていると主張する。確かに,甲12の1には,2つのプライマーが,他のプライマーにより合成された相補鎖を置換し,当該相補鎖を1本鎖の核酸にするOPとして機能する工程を含む核酸の増幅反応が記載されているといえる。しかしながら,甲12の1に記載された増幅反応は,鎖置換型増幅法(SDA法)であるのに対し,第1明細書に記載された発明は,SDA法とは異なる増幅方法である。したがって,第1明細書に甲12の1を援用する旨の記載があるからといって,そこに記載されたOPが第1明細書に記載された発明の一部となるものではない。

     

    (2)原告は、第1明細書の図1及び3の増幅反応ではTPがOPと同じ役割を果たしているので、第1明細書にはOPが記載されていると主張する。しかしながら、(中略)第1明細書に記載された第1プライマー(TP)は、OPとしての役割を果たすほかにも、(中略)二次構造(ステムループ構造)を形成するという役割も果たすものであり、後者の役割は、先に合成された相補鎖を1本鎖にするというOPとは、その構造も機能も異なるものである。したがって(中略)第1プライマーの記載があるからといって、直ちに第1明細書にOPが記載されているということはできない。

     

     

     

    4.考察

     

     本判例は、発明特定事項が「明細書に記載した事項の範囲」にあるとは言えないという類型を示したものといえよう。

     

     

     

     甲1発明はSMAP法として知られている方法であるのに対して、第一明細書で援用されている甲12の1に記載されている方法はSDA法である。ここで、上記3.(1)で示したように裁判所は、SDA法におけるOPと同一の機能を有するプライマーの記載は認められるが、SMAP法におけるOPについての記載があるとは言えないと判断している。つまり、同一の機能を有するが、明細書等の記載の中で、別の方法、過程で使用されているものは、ただちに同一の発明特定事項であるとはいえないと判断している。

     

     

     

     また裁判所は、第一明細書に記載のTPがOPと同じ役割を果たしているので,第1明細書にはOPが記載されているとの原告の主張を退けている。つまり、同一の方法、過程の中で同一の役割を果たしているものであるからといって、ただちにそれらが同一の発明特定事項であるとはいえないと判断している。

     

     

     

     これらの裁判所の判断より、発明特定事項を把握する際には、その発明特定事項に係る構成物がどのような構造で、どのような方法、過程の中で、どのような機能を発揮し、どのような役割を果たしているのか、という点を十分に考慮すべきであるといえる。

     

     「明細書に記載されている事項の範囲」を正確に判断することは、新規事項の追加を禁じられている諸手続き(補正、分割、翻訳)や、先願性(39条、29条の2)を検討するにあたり非常に重要なことである。特許関係者は上述した点に留意しながら、各種手続き、検討を行うべきである。

     

    みなとみらい特許事務所

     

    弁理士 辻田 朋子

     

    技術部 村松 大輔

     

     

    関連記事


お問い合せ