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    2014.3.7カテゴリー: 判例航海日誌

    2014年3月7日

    判例航海日誌

    村松 大輔

    平成25年(行ケ)第10048号審決取消請求事件

    炭酸飲料の小出し装置事件

     

    1 特許庁における手続の経緯

    平成11年3月16日 特許出願(特願2000-536650号)

    平成21年1月22日 拒絶理由通知

    平成21年7月27日 手続補正

    平成21年12月14日 拒絶理由通知

    平成22年3月23日 手続補正

    平成22年4月12日 拒絶理由通知

    平成22年10月20日 手続補正

    平成22年11月10日 拒絶理由通知

    平成23年3月16日 手続補正

    平成23年7月8日 拒絶査定

    平成23年11月14日 拒絶査定不服審判請求、手続補正(本件補正)

    平成24年10月11日 本件補正を却下 拒絶審決

     

    ・本件補正前の請求項

    【請求項1】

    第1室と第2室を有する容器を含み、

    第1室は小出しされるべき炭酸飲料を受容し、

    第2室は二酸化炭素(CO2)を受容し、

    少なくとも使用中には、第1室と第2室との間に開孔が設けられ、

    第2室から第1室へと流れる二酸化炭素の圧力を使用時に制御するための圧力制御手段が設けられ、第2室内には、二酸化炭素の少なくとも一部を吸収及び/又は吸着するための充填剤が配置され、充填剤が少なくとも活性炭を含み、圧力制御手段が、第1室内に大気圧より0.1~2バール過剰の圧力を与え且つ保つように設定されていることを特徴とする炭酸飲料の小出し装置。

    ・・・

    【請求項19】

    炭酸飲料はビールであり、小出し管が容器の頂部の弁から容器の周囲の外側に延びる端部まで延び、容器が卓上に直立して延びるとき、グラスを前記端部の下方に配置することを特徴とする請求項1記載の装置。

    ・本件補正後の請求項

    【請求項1】

    第1室と第2室を有する容器を含み、

    第1室は小出しされるべき炭酸飲料を受容し、

    第2室は二酸化炭素(CO2)を受容し、

    少なくとも使用中には、第1室と第2室との間に開孔が設けられ、

    第2室から第1室へと流れる二酸化炭素の圧力を使用時に制御するための圧力制御手段が設けられ、第2室内には、二酸化炭素の少なくとも一部を吸収及び/又は吸着するための充填剤が配置され、充填剤が少なくとも活性炭を含み、圧力制御手段が、第1室内に大気圧より0.1~2バール過剰の圧力を与え且つ保つように設定されており、

    炭酸飲料はビールであり、小出し管が容器の頂部の弁から容器の周囲の外側に延びる端部まで延び、容器が卓上に直立して延びるとき、グラスを前記端部の下方に配置することを特徴とする炭酸飲料の小出し装置。

     

    ・審決

    審決は、本件補正について、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認定した上で、前記第2の3記載のとおり独立特許要件違反であると判断して(同法17条の2第5項において準用する同法126条5項。補正が特許請求の範囲の減縮(同条4項2号)を目的とするものでなければ、独立特許要件違反による補正却下はできない。)、本件補正を却下するとともに(同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項)、補正前発明について、進歩性がないと判断して、拒絶審決をした。

     

    2.争点

    本件は、特許出願に対する拒絶査定不服審判不成立審決の取消訴訟である。争点は、①進歩性の有無及び②審判における手続違背の有無である。

     

    3.裁判所の判断

     本件出願に係る平成23年7月8日付けの拒絶査定は、(中略)請求項1~18、21~26、29~33に係る発明は特許を受けることができないとするもので、請求項19に係る発明は拒絶査定の理由となっていない。

     平成23年11月14日付け手続補正書による補正(本件補正)は、(中略)上記拒絶査定の拒絶理由を解消するためにされたもので、本件補正後の請求項(新請求項)1は、原告が審判請求書で主張しているように、本件補正前の請求項(旧請求項)1を引用する形式で記載されていた旧請求項19を、当該引用部分を具体的に記載することにより引用形式でない独立の請求項としたものであると認められる。そうすると、新請求項1は、旧請求項1を削除して、旧請求項19を新請求項1にしたものであるから、旧請求項1の補正という観点からみれば、同請求項の削除を目的とした補正であり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものではないから、前記のとおり、独立特許要件違反を理由とする補正却下をすることはできない。

     また、旧請求項19の内容は、新請求項1と同一であるから、旧請求項19の補正という観点から見ても、特許請求の範囲の限縮を目的とする補正ではない。したがって、審決は、実質的には、項番号の繰上げ以外に補正のない旧請求項19である新請求項1を、独立特許要件違反による補正却下を理由として拒絶したものと認められ、その点において誤りといわなければならない。

     そして、旧請求項19は、拒絶査定の理由とはされていなかったのであるから、特許法159条2項にいう「査定の理由」は存在しない。すなわち、(中略)旧請求項19である新請求項1を拒絶する場合は、拒絶の理由を通知して意見書を提出する機会を与えなければならない。しかしながら、本件審判手続において拒絶理由は通知されなかったのであるから、旧請求項19についての拒絶理由は、査定手続においても、審判手続においても通知されておらず、本件審決に係る手続は違法なものといわざるを得ない

     

     被告は、本件補正の目的は、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、すなわち、(中略)拒絶査定時に進歩性がないと判断された請求項に係る発明すべてについて請求項19、27の記載において被引用請求項に対して付加していた事項を付加したものであり、それは補正前後で請求項に記載された発明の産業上の利用分野のみならず解決しようとする課題も同一と評すべき程度の補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである、と審決で認定した旨を主張する。

     しかしながら、(中略)請求項1についてみれば、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、請求項の削除を目的にしたものであることが明らかであり、審決はそれを誤認したにすぎないものと認められるから、被告の主張を採用する余地はない。

     

    4.考察

     本件は特許法17条の2第5項各号に規定の補正の目的が争点となった。

     旧請求項1及び19を比較すると、旧請求項19の「小出し管」は、旧請求項1の「発明を特定するための事項」ではないことがわかる。したがって、本件補正が同法同項2号に規定の「特許請求の範囲の減縮」に該当しないことは明らかである(同号かっこ書)。

     

     しかし、裁判所は「小出し管」については言及せずに、新請求項1と旧請求項19の記載の同一性をもって、本件補正の目的を同項1号の「請求項の削除」と判断している。

     裁判所の判断手法は、請求項に記載の発明は請求項ごとに独立したものであることを考えれば至極妥当なものであると考える。

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