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  • 平成24年(ワ)第8221号 実用新案権・意匠権侵害差止等請求事件

    2013.8.16カテゴリー: 判例航海日誌

    判例航海日誌

    2013年8月16日

    辻田・村松

    平成24年(ワ)第8221号 実用新案権・意匠権侵害差止等請求事件

     

    1.事件の概要

    (1)事案の概要

    本件は,履物装着用ヒールローラーに関する実用新案権(本件実用新案権)及び意匠権(

    本件意匠権)を有する原告が,被告による製品(被告製品)の製造販売が本件実用新案権及び本件意匠権を侵害すると主張して,被告製品の製造販売等の差止めと,民法709条,実用新案法29条2項又は意匠法39条2項に基づき侵害賠償を請求した事案である。

     

    (2)経緯

    平成23年1月8日            被告製品10032ペアを輸入。

    平成23年1月8日~3月30日 485ペア販売

    平成23年4月1日            全販売先に被告製品を回収、販売の中止を求め、これを                                                     回収。

    平成23年6月中旬以降     被告新製品を販売。

    平成23年9月28日          被告製品9547ペアを廃棄。その際、被告新製品に取り付ける部品は取り                          外し、残りの本体を買い取り業者に渡した。

    平成24年8月14日時点まで          代理店のHPに被告製品の写真が掲載されていた。

    平成24年10月                 代理店HPの写真が被告新製品に差し替え

     

    (3)認否

    被告は、被告製品が原告の本件実用新案権及び本件意匠権を侵害することは認めた。

    しかし、廃棄請求の対象と損害については争った。

     

    2.本訴訟における争点

    譲渡又は貸渡しのための展示(実2条3項、意2条3項)の解釈

    侵害の行為を組成した物(実用27条2項,意37条2項)の解釈

     

    3.裁判所の判断

     原告は,上記被告製品の写真が掲載されていることをもって,現在も被告製品の販売が継続されていると主張する。しかし,上記ウ,エの事実及び弁論の全趣旨によれば,上記被告製品の写真が掲載されていた間も,実際に被告がミミー有限会社及び有限会社ドリームクリエイションを通じて販売していたのは,被告新製品であったと認めるのが相当である。

     被告が上記イの数量を超えて被告製品を販売したことを認めるに足りる証拠はない。

     原告は,仮に実際に販売しているのが被告新製品であろうと,被告製品が譲渡のために展示されている事実が存するのであるから,これによる被告の利益は原告の損害と推定されるべきであると主張する。しかし,実用新案法2条3項,意匠法2条3項で「実施」とされる

    「譲渡のための展示」とは,侵害物品の譲渡に向けられた展示をいい,侵害物品の譲渡に向けられていない展示はこれに当たらない。上記(ア)ないし(ウ)によれば,平成24年10月までの被告の代理店のウェブページには被告製品の写真が掲載(展示)されていたが,実際に販売されていたのは被告製品ではなく被告新製品だったのであるから,被告製品の展示は被告製品の販売に向けられたものではなく,実用新案法2条3項,意匠法2条3項にいう「譲渡のための展示」に当たらないと解するのが相当である。

     

    (エ) なお,原告は,被告製品から取り外したローラーは「侵害の行為を組成した物」(実用新案法27条2項,意匠法37条2項)であり,廃棄の対象となると主張する。しかし,実用新案法27条2項,意匠法37条2項にいう「侵害の行為を組成した物」とは,侵害行為の必然的内容をなす物,すなわち,それなしには侵害行為が成立し得ない物をいうと解するのが相当である。被告製品に用いられていたローラーであっても,被告製品から取り外された後は,侵害行為の必然的内容をなすものとはいえず,被告製品に用いられていたローラーを実用新案法27条2項,意匠法37条2項にいう「侵害の行為を組成した物」として廃棄を求めることはできない。

     

    4.考察

    (1)「譲渡のための展示」の解釈について

    本件は、実用新案法2条2項、及び意匠法2条2項の「譲渡のための展示」の解釈について説示された興味深い判例である。「譲渡のための展示」というためには、「特許製品を展示した」という事実だけでは足りず、その後の特許製品の譲渡の事実が考慮されることが本判決で明らかにされた。

     

    (2)廃棄請求について

     「侵害の行為を組成した物」(実27条2項,意37条2項)は廃棄請求の対象となる。そして、製造途中の製品(いわゆる半製品)は「侵害の行為を組成した物」として認められることが判示されている。侵害品以外に転用が可能な場合にはその廃棄を認めることは行き過ぎであるから、「半製品」とは、転用不可能な段階にまで仕上げられたものまでを指すと解釈すべきであろう。

     本件については、ローラー部分は他製品にも転用が可能であると考えられ、さらに現実に被告新製品の部品として使用されているため、「侵害の行為を組成した物」とは認められなかったと考察する。

     

     

    みなとみらい特許事務所

    弁理士 辻田 朋子

    技術部 村松 大輔

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